投稿:2026/03/12
更新:2026/03/13
多拠点を運営する学習塾が実現!2万台のデバイスに感染を拡げないネットワークセキュリティ基盤
登壇者
英進館ホールディングス株式会社 教務本部/副長
岩下 裕幸
小学・中学・高校・大学受験指導、個別指導、東進衛星予備校、各種公開テスト、教育講演会、理科実験、野外活動、合宿イベント、花まる学習会、学童保育など、未就学児から大学受験生まで幅広い年齢層に教育サービスを提供しています。 西日本トップクラスの合格実績と規模を誇る学習塾です。 福岡県をはじめとした九州各県、および広島県に教室を展開中!
登壇者
株式会社網屋 セキュリティプロダクト事業部 Network All Cloud部
川崎 麻未
網屋へ入社後、主にフルマネージドSASE「Verona」の販売を担当。VPNやリモートアクセス環境の他、ゼロトラストセキュリティの環境構築も支援。ネットワークセキュリティに関する難解な用語や仕組みなどのわかりやすい解説に定評があり、社内外を問わず、年間20件以上のウェビナー講師を務める。
九州一円から広島地区にわたって120拠点以上を展開する学習塾「英進館」。生徒数は4万人を超え、生徒・教職員が利用する端末は2万台にのぼります。急激な事業拡大の陰で、ネットワークインフラの老朽化とセキュリティ対策の「点在化」という構造的な課題が積み重なっていました。
同社はこの課題を解決するためにフルマネージドSASE(Secure Access Service Edge)「Verona」を採用し、ネットワーク全体の再設計を断行。Verona Summit 2026では、情報システムを担当する岩下 裕幸 氏に、導入の背景から選定の決め手、導入後の効果まで詳しく語っていただきました。
2万台のデバイスが抱えていた「構造的な不安」
川崎
現在、英進館様では全拠点のデバイスを合計すると2万台以上もあるそうですが、セキュリティに関する課題はどのようなものだったのでしょうか。
岩下様
現在、英進館に通っていただいている生徒様が学習で利用したり、社員が業務で利用したりする約2万台の端末は、すべてが何らかのネットワークに接続されているため、安全かつ効率的に管理・保護することが我々の最大の課題でした。
この15年で教育の多様化が進み、コロナ禍でデジタルコンテンツの普及が一気に加速しました。事業規模の拡大やネットワークニーズへの対応を優先していった結果、数多くの拠点と端末のどこで何が起きているのかがパッと分からないような構造に陥っていたのです。
各拠点で小中学生向け・高校生向けのコンテンツの組み合わせが複数パターン存在するので、それぞれの管理も大変でした。全体を一元的に管理できていないため、万が一有事が起これば「この拠点はどういう構成だったか」を調べるところから始めなければならず、常に不安を抱えていました。
点対策では限界——「製品が足りない」のではなく「設計が足りていない」
川崎
それまではどのようなセキュリティ対策をされていたのでしょうか?
岩下様
デバイスへのアンチウイルスの導入や、ネットワーク上へのUTM(Unified Threat Management/統合脅威管理)の設置など、個別の対策はもちろんしてきました。ただ、ネットワーク全体として守るという感覚は、どうしても持てなかったですね。
◆UTMとは
「Unified Threat Management(ユニファイド・スレット・マネジメント)」の略で、ファイアウォール・アンチウイルス・IDS/IPSなど複数のセキュリティ機能を1台の機器に統合した製品。ネットワークの入り口で脅威を検知・遮断する役割を担う。
川崎
限界を感じた具体的なポイントはどこでしたか?
岩下様
急激な企業の成長にネットワークインフラの改善が追いつかず、全体のセキュリティを考慮した設計になっていないと気づきました。「製品が足りない」のではなく「設計が足りていない」というのが私たちの気づきです。拠点を増やすたびにリスクが増大していく、と感じていました。何か起きた時にどの拠点でどの端末がどこに通信していたかが分からないというところが、最大の課題でした。
こうした課題を3つの要件として整理し、RFP(提案依頼書)にまとめた上でサービスの選定に臨みました。具体的には、セキュリティ(内部からのデータ流出対策・外部からの攻撃/侵入対策)、通信(トラフィック増加対策・生徒用Wi-Fiの整備計画)、そして管理・運用(IPアドレス管理の再設計・メンテナンス/トラブル対応)です。
川崎
要件の1つとして、トラフィック増加対策を重視しておられるのはなぜでしょうか。
岩下様
近年、体調不良で休んでいる生徒向けにライブ授業を生配信したり、録画授業をオンデマンドで提供したりと、インターネットを活用する頻度が非常に増えています。学習塾にとって通信品質はビジネスの生命線であるため、セキュリティを強化しても、サービスレベルの品質が下がることは絶対に許容できないのです。
導入の決め手——「侵入させない」から「拡げない」への発想転換
川崎
Verona SASEを選んでいただいた際に、決め手となった点や判断基準を教えてください。
岩下様
ゼロデイ攻撃や新しいマルウェアが出現し続けているこの環境において、現実解として「侵入させない」ではなく「万が一侵入しても、そこで止まる」設計を重視しました。レイヤーとしてもネットワークレベルからOSアプリケーションレベルに至るまで、多層的に防御するイメージを想定していました。
◆ゼロデイ攻撃とは
ソフトウェアやシステムの脆弱性が開発者に把握される前(ゼロデイ=対策ゼロの日)に行われる攻撃。パッチ(修正プログラム)が存在しない段階で悪用されるため、従来の脆弱性対策だけでは防ぎにくい。
川崎
具体的には3つのポイントを挙げていらっしゃいましたね。それぞれ詳しく教えていただけますか?
岩下様
1つ目が「拡げない」——マイクロセグメンテーションの考え方です。拠点ごとにネットワークセグメントを細かく分割し、感染時の被害を最少化します。
◆マイクロセグメンテーションとは
ネットワークを細かいセグメント(区画)に分割し、区画ごとにアクセス制御を行うセキュリティ手法。万が一1つの区画にマルウェアが侵入しても、他の区画への横展開(ラテラルムーブメント)を防ぐ効果がある。
岩下様
2つ目が「守れる」——ゼロトラストの実装です。CASB(Cloud Access Security Broker/クラウドアクセスセキュリティブローカー)・SWG(Secure Web Gateway/セキュアウェブゲートウェイ)・FWaaS(Firewall as a Service/クラウド型ファイアウォール)による統一されたセキュリティの実装という点に大きな安心感がありました。
◆ゼロトラストとは
「すべてのアクセスを信頼しない(Zero Trust)」を原則とするセキュリティモデル。社内外を問わず、すべての通信を検証・認証した上で許可するという考え方。従来の「社内は安全」という境界型セキュリティとは根本的に異なる。
岩下様
3つ目が「特定できる」——フルマネージド運用です。設定からトラブル対応まで運用を代行してもらうことで、有事の際に原因や被害を特定できる運用体制を構築できることが3つ目のポイントでした。
Verona SASEを選んだ理由——国産フルマネージドの強み
川崎
他のサービスとも比較検討する中で、最終的にVerona SASEを選ばれた理由を教えてください。
岩下様
Verona SASEを選んだのは、包括的な導入によるコスト面でのメリットもありましたが、網屋さんの専任担当者によるダイレクトサポートが決定的な理由でした。海外メーカーと遜色のないセキュリティ機能を持ちながら国産という安心感で、最終的にはほぼ迷わず決めさせていただきました。
川崎
ダイレクトサポートが決め手だったとのことですが、英進館様にとって特にサポートが重要だったのはなぜでしょうか?
岩下様
実は導入と並行して、Windows 10のサポート終了に向けた社内全拠点のPC全台入れ替えプロジェクトも動いていました。各拠点のルーターなどの物理機器の刷新と、各拠点のPCの入れ替えを同時並行で進めるという、極めてスピード感が求められる案件でした。約半年後を期限としたタイトなスケジュールの中で、網屋さんのレスポンスの速さと的確さがあったからこそ実現できました。
岩下様
他のSASEサービスでもマネージド運用は付けられますが、エンドユーザー→ベンダー→メーカーという多段階の問い合わせフローになりがちです。一方でVerona SASEはSEと直接やり取りができるため、問い合わせのスピードと精度が格段に高く、これが多拠点・多端末の複雑な環境を扱う我々にとっては重要なポイントでした。
SentinelOne・SKY・ALogとの組み合わせで多層防御を実現
川崎
Verona SASE以外にもソリューションを導入いただいていますね。
岩下様
はい。Verona SASEを土台として、複数のソリューションを組み合わせた多層防御の環境を構築しました。デバイス管理にはSKYの製品を採用し、エンドポイントを確実に管理・制御しています。これまでのアンチウイルスに加え、EDR(Endpoint Detection and Response)としてSentinelOneを導入しました。有事の際に端末側で確実に脅威を止める役割を担っています。
◆EDRとは
「Endpoint Detection and Response(エンドポイント・ディテクション・アンド・レスポンス)」の略。PCやサーバーなどのエンドポイントにおける不審な動作をリアルタイムで検知し、迅速に対応(隔離・調査・修復)するセキュリティソリューション。従来のアンチウイルスより高度な脅威検知が可能。
川崎
ALogの導入効果についても教えてください。
岩下様
ネットワーク以外のインシデント管理もALogで一元化できました。これによって「何も起きていない」ということを可視化できるようになったのが大きな効果です。SASEもクラウドサーバーもSKY製品のログもALogに集約されるので、個別管理が不要になり運用が非常に楽になりました。ALogの管理画面は分析したい観点・時間軸で素早く確認でき、速度も非常に速い。ストレスなく使えています。
◆MDRとは
「Managed Detection and Response(マネージド・ディテクション・アンド・レスポンス)」の略。セキュリティの監視・脅威検知・インシデント対応をアウトソーシングするサービス。専門のセキュリティチームが監視し、脅威を検知した際の分析・対応・報告までを代行する。
セキュリティは「コスト」ではなく「事業の基盤」
川崎
今回の全社的なセキュリティ基盤の整備を振り返って、どのように総括されますか?
岩下様
セキュリティ強化は必須ですが、経営層への投資理由としてはビジネス上の根拠も必要です。セキュリティ強化に加えて快適な通信環境の整備で、事業の拡大に耐えられるインフラ基盤と運用体制が実現できるという提案をいただき、実装してまさにイメージ通りになりました。
私たち学習塾は生徒・保護者の個人情報や成績情報といった非常にセンシティブな情報を日々取り扱っており、これらを確実に守るセキュリティは当たり前の基盤だと考えています。
また、デジタル化や働き方の変化、DXの進展など、どの業界でも事業環境は大きく変わり続けています。新しいサービスや拠点の展開、運用の効率化に挑戦しようとした時に、インフラやセキュリティが足かせになるようではスピード感を持った経営判断はできません。今回の取り組みは、そういった意味で将来への投資だったと弊社は捉えています。「セキュリティをコストとして見るのではなく、事業を伸ばすための基盤としてどう位置づけるか」——この問いに対して弊社の取り組みが少しでも皆様の参考になれば幸いです。
川崎
本日はご清聴いただき、誠にありがとうございました。
【登壇者/企業】
英進館ホールディングス株式会社
https://www.eishinkan.net/
小学・中学・高校・大学受験指導、個別指導、東進衛星予備校、各種公開テスト、教育講演会、理科実験、野外活動、合宿イベント、花まる学習会、学童保育など、未就学児から大学受験生まで幅広い年齢層に教育サービスを提供しています。西日本トップクラスの合格実績と規模を誇る学習塾です。福岡県をはじめとした九州各県、および広島県に教室を展開中!