1937年創業の東京航空計器株式会社は、航空機用計器やオートパイロット装置をはじめ、防衛関連事業や交通安全分野の「オービス」などを手がけ、陸海空の安全を支えてきた。防衛関連企業として厳格なセキュリティ基準への対応が求められる中、同社は積極的に体制強化に取り組んでおり、今回は防衛産業サイバーセキュリティ基準(NIST*準拠)を背景に導入した国産SIEM「ALog」とMDRサービスについて、その経緯と効果を伺った。
*NIST:「National Institute of Standards and Technology(米国国立標準技術研究所)」の略称。サイバーセキュリティに関する世界的な基準やガイドラインを策定。
左から 代表取締役 社長 木村様、情報システム部 部長 山田様、主査 小島様、課長 久村様、石田様
導入に際して、特に防衛産業サイバーセキュリティ基準への対応という点で、どのような課題に直面していたのでしょうか?
木村様
官公庁を顧客に持つ当社にとって、防衛省が定める基準を満たすことは信頼を維持するうえで欠かせない要件です。しかし「防衛産業サイバーセキュリティ基準」は、システムログの取得から脅威検知までを網羅的に求めており、従来の“形式的なログ管理”では到底対応できません。だからこそ実効性のある仕組みづくりを急ぐ必要がありました
山田様
基準が求める範囲をカバーするには、サーバや端末ごとに発生する膨大なログを日常的に追い続ける必要がありました。しかし当時の仕組みでは一部のログしか確認できず、抜け漏れや見落としの不安を抱えていました。限られた人数で確実に監視するには、どう仕組み化するかが大きな課題でした
久村様
以前はWindowsイベントログや資産管理ツールを使っていましたが、保存期間の制約や検索性の低さから、必要な証跡にすぐたどり着けませんでした。また、内部の挙動まで把握することはできていませんでした
小島様
監査でも重要なのでログを取ってはいたものの、十分に監視できていなかったというのが正直なところです。少人数で通常業務を回しながら高度な基準に対応すること、持続的にセキュリティ水準を維持することは負担に感じていましたね
厳格な基準に対応する中で、数ある製品の中からALogを選定した決め手は何だったのか?
山田様
当初、海外製品も候補にありましたが、機能が豊富である一方で複雑さが目立ち、専門知識がなければ扱えませんでした。さらにサポートも英語ベースで、基準対応に必要な細かいニュアンスを相談するのは難しいと感じました。その点、国産のALogは日本語でのきめ細かい支援があり、安心して導入できるのではと判断しました
小島様
複雑な製品では現場に定着せず、サポートの距離が遠ければ日常運用は回りません。その意味で、ALogはシンプルな操作性で現場にすぐ馴染みました。直感的に検索できるので、短時間で必要なログを探せることに助かっています。
石田様
海外製品を検討した際、検索には独自のコマンド操作が必要だったため、慣れるのに学習コストを感じました。ALogは導入直後から必要な情報にすぐアクセスできたので、結果的に、日常業務に無理なく組み込めたのが大きいです
木村様
ALogは直感的に検索できるシンプルさがあり、MDRによる専門家の支援も受けられる。公共分野での採用実績も安心につながり、“任せられる”と確信し導入決定しました
ALogとMDRサービスを導入したことで、同社は3つの効果を実感していると言う。
1. 精神的安心感
山田様
特権アカウントの利用状況が可視化され、“この時間に自分が使った”と証明できるようになりました。ブラックボックスだった部分が透明になり、大きな安心を得られました
2. 運用体制の強化
小島様
MDRの月次報告会*で、普段の業務では見落としがちな不審な操作や異常なアクセスを指摘してもらえます。ログを集めただけでは見えない運用の穴を発見できました
*MDRサービスによる月次報告会では、日々の運用では気づきにくい不審なユーザー操作や大量アクセスなどの異常兆候を、専門アナリストが抽出し、改善提案と共に報告している。
3. 経営層との連携
木村様
ALogのレポートはわかりやすく、経営判断を必要とする場でもそのまま活用できています。従来は情報システム部が資料を作り込んで報告していましたが、今ではレポートを直接提示できるため、セキュリティの状況を経営課題として共有してもらっています
同社が高く評価されているのは、システムやサービスの品質だけでなく、網屋の柔軟な対応と密なコミュニケーションにもあると言う。
久村様
追加費用がかかりそうな要望にも2,3日で情報提供してくれたりと、柔軟に応じてもらえます
石田様
月次報告会でも単なるレポートの説明にとどまらず、こちらの状況を踏まえた提案をしてもらえるので助かります
木村様
買って終わりではなく、人と人とのキャッチボールが続くことが安心につながっています
基準対応を土台として整えた同社は、次のステップとしてDX推進とセキュリティ強化をどう結びつけていくのか。
山田様
今後はAIによる検知精度の向上や自動化が進むことで、日々の監視から得られる知見がさらに深まり、より高度な対応が可能になると考えています。こうした取り組みを通じて、持続的なセキュリティ体制を実現し、DX推進にもつなげていきたいと思います
木村様
ALogとMDRはもはやツールではなく、DXを支える基盤だと考えています。人材不足を補いながら、網屋さんの知見を借りて強化していきたいと思います
形式的なログ管理から脱却し、ALogとMDRで可視化と実効性を実現。防衛産業に求められる厳格な基準に応えるセキュリティ基盤を着実に築き、DX推進とともにさらなる強化へと歩みを進めている。